めいめい自分のことだけでなく、他人の事にも注意を払いなさい。
フィリピの信徒への手紙 2章4節
ある日の朝日新聞の記事に、興味深い記事がありました。東京六本木に試験的に開業した「注文をまちがえる料理店」という名前のレストランのエピソードです。このレストランは認知症を患う人々の支援団体によって経営されています。お店で働くのはみんな認知症の方々です。賛同した人々が大勢お店にやって来ました。予想した通り、来店したお客様のアンケートの結果、10人中8人は応対に間違いがあったと答えました。違う料理が出て来たり、あったかいコーヒーにストローが付いて来たりと、様々なミスがあったそうです。しかし、お客の95パーセントが、「また来たい」と回答しました。なぜなら、働く人たちがみんなニコニコ、生き生きしていて、こちらがとても癒されたと感じたからでした。自分の要求が満足させてもらえるかどうかより、生き生き、ニコニコした人々の存在と、自分がその人たちを受け入れることによってそれが実現していることを体験することの方が、はるかに大きな満足を得られるということに気付かされたのだと思いました。
今月の聖句は、「他人のことにも注意しなさい」とあります。「となり人を愛しなさい」という共愛の大切にする聖書の考え方にも通じます。でも、それは私たちが自分を犠牲にしたり、律することで行わなければならない行為なのではなく、となり人、助けを必要としている人々の生きやすい場所を作ることで、実は自分も含めてみんなが生きやすい社会になるのだということなんだと思います。こども園の園児たちがそんな優しさを心の土台としてくれることを願っています。
荒谷 出:こども園宗教主任