「愛に根ざし、愛にしっかりと立つ者としてください。」
エフェソ信徒への手紙 3章17節
エフェソの信徒への手紙の著者は、パウロともパウロによって大きな影響を受けた人々とも言われています。エフェソとは、ユダヤの世界から外、つまりローマ帝国の中に散在する当時の国際都市の一つでした。そこにひっそりと肩を寄せ合っているユダヤ人や、彼らの仲間に加わった、いわゆる異邦人といわれる伝統的、正統でない人々の教会に向けて書かれた手紙が、エフェソの信徒への手紙です。
様々な人が一緒に暮すと、そこには必ず壁が生じます。言葉や、習慣、信仰、民族、感性、経済状況と、人間はありとあらゆる壁に阻まれて生きています。単に2000年前の世界でのことではなく、今だって同じだと感じる人は多いと思います。その壁のせいで孤独になったり、壁の外側の存在を見下したり、排除したり。人間はいつになったら互いを尊重し、共に生きる知恵を身に着けるのでしょうか。人類の歴史が始まって以来、今日に至るまで争い、戦争、行き違いを繰り返す人間を見ると、ついそんな悲観的な思いに支配されてしまいます。
おそらく、当時の人々にもそんな悩み、苦悩が現実の問題としてあっただろうと思います。その人々に、聖書は、「愛に根ざし、愛にしっかり立つ」ことを教えていると思うのです。愛することとは、その人の目線に立って、その人に寄り添うことでもあります。自分の思い、価値観でその人を評価したり、裁いたりするのではなく、まず、その人を自分と同じような大切な存在であることを受け入れるということだと思います。
愛に根ざす人としてくださいという聖書の言葉は、そんな生き方を求める言葉です。自分と違う存在に気づきはじめる子どもたちの成長の過程で、まず、その人を受け入れる、愛することができる人として成長してくれることを、大人である私たちがしっかりと応援していけることを願っています。
こども園宗教主任 荒谷 出