「わたしは必ずあなたと共にいる。」
出エジプト記 3章12節
旧約聖書に登場する人物のうち、おそらくもっとも有名な人物はモーセです。彼は、エジプトで育ち、奴隷とされていたイスラエルの人々を自分の同胞と感じ、彼らを守るために、エジプト人を殺害しました。けれども、仲間であるはずのイスラエル人たちにも拒まれ、傷心のうちに殺人犯としてエジプトを脱出、異国の地に寄留者として身を寄せて生きなければなりませんでした。
エジプトにも、イスラエルにも見放された彼が、ひっそりと羊飼いとして暮らしていたある日、山の上で神から「エジプトにいって、イスラエルの民を救い出してきなさい」と命じられたのです。その時に、モーセが、「私のような者に、いったい何ができるでしょう」と訴え、それに対する神の返答が、今月の聖句の言葉です。
誰にも認められず、そして自分の存在への確信も失って生きている、そのような自分に、神が命じるような大それたことができるはずはないと、感じたように思います。そのモーセに、神様は、「わたしは必ず、あなたと共にいる」と語り掛けられました。言い換えれば、「私が一緒にいるから大丈夫」という言葉です。
新しい聖書の翻訳では、この神様の名前も「私はいる」という名前と訳されています。「一緒にいる」という名前です。苦しみや悲しみを抱えて生きる人々のために働きなさいという神の命令の前に、「自分に何ができる?」と問うのは、私たちも同じですね。この社会で小さくされた人々、声なき人々がたくさん存在する現実の前に、無力さしか感じない私たちです。でも神様が、「私が一緒にいるから大丈夫」と言ってくださる言葉を、私たちの力としていけることを願います。こども園での生活を通して、そんな神様の声を聞く心が子どもたちの心に養われますように。
こども園宗教主任 荒谷 出