今月の聖句 10月
「ひとりよりもふたりが良い。」
コヘレトの言葉 4:9
この聖書の言葉は、旧約聖書に39の書物がある中の「知恵の書」と呼ばれるジャンルに入る書物の一つコヘレトの言葉に出てくる格言です。ここだけを抜き出すと少しわかりづらいのですが、この書を通して読むと、その味わいはさらに深まります。
私たちの暮らす世界には理解しがたい不条理が満ちています。人は正義や平和を求めながら、それでも戦争は絶えず、苦しみや嘆きは世界のあらゆる場所で絶えることがありません。
正直に生きるものがバカを見、人を出し抜くことをためらわない人が富を手に入れその豊かさを誇る現実。人と理解し合うこと、支えられることよりは、理解されないことからの孤独、疲れ、いらだちの多さに、何を心の支えとしたらよいのかわからなくなってしまう世界の現実の中で、虚無感に支配されそうになったのは、聖書の民、イスラエルの人々も同じだったのでしょう。
すべてのことはむなしい・・・と始まるこの書物で、著者は、それでも「何ごとにも時が」あり、そして、「神はすべてを時宜にかなうように造り、また永遠を思う心を人に与えられる」と語ります。
私たちと同じような無力感、虚無感に飲み込まれてしまいそうになる現実の中で、聖書は「ひとりよりもふたりが良い」と語ります。共に生きることは、私たちの根本的な生き方の礎だと、困難を生きる中で昔の人々は普遍的な知恵として語り続けたのだと思います。
こども園での毎日の中で、子どもたちの心の支えが、家族やお友達の存在と、それを大切にする心として育ってくれることを願っています。
宗教主任 荒谷 出
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