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10月「あなたがたはそれぞれ、賜物を授かっているのです。」

今月の聖句 10月

あなたがたはそれぞれ、賜物を授かっているのです。

ペトロの手紙Ⅰ 4:10



キリスト教が始まってしばらくして、ローマ帝国の様々な都市に暮らすクリスチャンたちに向けて書かれたのがペトロの手紙などをはじめとする公同書簡といわれる一連の手紙です。当時、キリスト教はローマ帝国に広がっていく中で激しい迫害を受けていました。人目を避けて集まり、信仰を持ち続けようとしていた人々の思いは命がけでした。夜中に当時ローマの世界ではカタコンペと呼ばれる洞窟を利用した墓にひっそりと集まり礼拝をささげていたと言われています。

そんな日々の中で次第に仲間に加わる人々はユダヤ人であったり、ユダヤ教とは違った習慣や文化、言語、人種を背景にした人々であったり、貧しい人も社会的な地位をもった人もいる様々な人が集まる共同体でした。命が脅かされる迫害に怯えながらも次から次へと仲間が加わっていったことは、まさに理解を超えた奇跡であるともいえます。たった数世紀後には、圧倒的に彼らを迫害していたローマ帝国の国教としてキリスト教が置き換えられる事態にまで広がり、人々の心をひきつけていたのだろうと思われるからです。

しかしながら新約聖書の書かれた背景を研究していくと、そうしたバックグラウンドの違いが人々を分断し初期の教会は崩壊の危機にも面していたことがうかがえます。お互いの違いや考え方の違いから人々は同じ信仰のもとに集まった共同体としてのアイデンティティを失う危機に直面していたわけです。

そんな人々に向けた書簡の中に記されているのが今月の聖句の言葉です。

たとえお互いの中に違いや格差があったとしても、どのような人にも神様は賜物(ギフト)を備えてくださっている。だからそれを尊重しあって共に生きる必要があるということを聖書は教えていると言えます。

現代の社会は格差の社会であり競争の社会です。こども園の一人一人も卒園してからそんな価値観にあふれる社会で大人として成長していかなければなりません。描いていた自分になれなかったり、周りからの期待に応えられずに苦しむ体験もするかもしれません。でも、それでも自分には神様から与えられたギフトがあるということ、価値があるということ、そしてそれは自分だけでなく、自分の出会うすべての人が同じように価値ある存在であることを幼い心の一番奥深いところに刻み込んで成長していってくれることを心より願います。

 

 

こども園宗教主任 荒谷 出


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